自邸「唐松」の変化のプロセス

建築設計事務所を開業して3年が経過し、自邸「唐松」の増築を行いました。これまで自宅の一室を事務所スペースとしていましたが、子供が3人に増え生活音が気になりはじめました。どこかに事務所を借りるか、新築するか、増築するか、検討を開始。すぐに、お客様の建築をつくりながら、自社事務所の新築をする事は、かなりハードルが高いと言う事がわかり、もっとも時間と費用のロスが少ない増築をする事にしました。そのタイミングで生活スタイルの見直しも行いました。コンセプトは「ローコスト、ロータイム」。おのずと“基礎工事を行わず、いかに事務所を増築するか?”に考えが至りました。既存の玄関横にある1坪物置の基礎を利用することに。増築1階床は木造で物置の基礎に梁をわたし作る事にしました。現在、そこが3坪のお客様との打合せスペースになっています。物置入口だった所を事務所の入口とし、階段室は物置の基礎部分から木造片持梁りで跳ね出させて空中が踊場となり、折り返し2階へ。2階は事務所スペース6坪としました。結果的に1坪玄関物置から1階打合室3坪+玄関・階段・トイレ1坪と2階事務所スペース6坪、計10坪増床しました。


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増築後の自邸「唐松」 住宅棟のラウンジ吹抜けに床をほどこし 大開口のそばでより近くに唐松林を感じることができるように。吹抜けをパインサーモウッド材でふさぎ床としました。幅120mmのサーモウッド同士は10mmの隙間をあけウッドデッキのように施工し、1階と2階の空気感環境をつなげています。夏は冷房を1階へ、冬は暖房を2階へ空気が動く様にしています。床を設けた事で、大開口への接近が可能となり唐松林がより身近に感じられる様になりました。
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変化前の吹抜け。窓がとても遠く感じます。
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マット運動で使用する厚手の生地に染色しソファマットが作られています。珪藻土の塗り壁との相性も良いです。
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ソファスペース 引きの画像。道路との位置関係がわかります。1階車庫を道路側に設けることで、全面道路を歩く人の視線を遮ります。
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廊下よりの眺め。吹抜けを床にした事で、2階スペースが拡大し、ゆとりある空間へと変化しました。家族構成も変化し3人家族から5人家族へ。
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既存住宅の2階キッチンダイニングの水平連続窓を活かしつつ、増築するにはどうするのがベストか。水平連続窓は大変気に入っていたので残すことに。その方法として、新たに設ける事務所棟の外壁を斜めに設けました。そうすることで、住宅棟の水平連続窓からは隣屋の外壁は見えなくなり、新たに設けた事務所棟の唐松の外壁が見え、周辺環境と離脱して敷地前面の唐松林がより際立ってみえる様になりました。建物の外観もV字型となり、個性を加えることができました。
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変化前のLDK。
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右側が増築した事務所棟、張りたての唐松無塗装材は、オレンジ色です。2年ほど経過すると左側の住宅棟と同じ色合いになります。
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変化前の外観。右側部分の平屋(物置)部分の基礎を使用し事務所棟を増築しました。
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増築した1階の事務所 打合せスペースです。天井は、変化前の平屋部分、屋根付きスペースの軒天井を延長しています。座って打合せするスペースなので、天井の高さを2.2mに抑え座ったときに落ちく空間としました。
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変化前の玄関ポーチ、物置(右)、屋根付きスペース(奥)の軒天井です。
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増築した1階の事務所 打合せスペースです。床から天井までの窓。光が美しいです。
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増築した1階の事務所 打合せスペースです。ペンダントライトは自作です。
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自作ペンダントライト。コンクリートと鉄番線で作成しました。
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自作ペンダントライト。コンクリートと鉄番線で作成しました。
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増築した2階の事務所スペースからの前面 唐松林の眺めです。変化前は屋根だったスペースを事務所に。住宅棟の水平連続窓をふさがないため、事務所棟の外壁が斜めになっています。斜めになった事により正面窓ガラスがより象徴的となり外観の特徴となりました。
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素材の境界線。
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白塗装の壁と手摺。
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階段室踊り場からの見上げ。階段に座りながら空と唐松を眺めお客様の建築計画を考える事も。階段室は思考するスペースとしても利用できます。
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増築した事務所棟。
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変化前の玄関ポーチと物置。
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事務所棟の階段室 踊り場からは、空を望めます。
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素材の境界線。
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唐松の外装材。
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インターフォンを唐松外装材に埋めるだけで、違った印象になります。
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上空からのながめ。増築した事務所棟は、シート防水を採用し0勾配屋根を採用しています。シート防水の可能性を自社建築で検証しお客様の建築へフィードバックします。
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上空からのながめ。
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外装と窓のディテール。
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外装と窓のディテール。
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唐松の変化2024 天井ルーバーを撤去し新建材を検証。木の繊維ウッドボード(シュタイコベース)+天然粘土塗料(レームファルべ)。
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唐松の変化2024 木の繊維を圧縮成形したウッドボード シュタイコベースを貼ります。シュタイコベースは、断熱性・蓄熱効果・遮音性があります。
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唐松の変化2024 シュタイコベースの上に天然粘土塗料レームファルべを塗ります。
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唐松の変化2024 天然素材粘土塗料 マットな質感で高級感があり味わいもあります。
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唐松の変化2024 経年劣化した珪藻土の上から子供達とDIYで天然粘土塗料を塗ります。簡単です。
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唐松の変化2024 雪とクリスマス
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唐松の変化2024 ラウンジをアウトドアストックルームに変化。カーテンでしきり雑多な物達を収納。
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唐松の変化2025 新たにバルコニーを設けました。2016年に増築した事務所棟(右側)の外装 唐松材も住宅棟(左側)と馴染んでいいます。

2022年竣工

設計:合同会社 永田大建築設計事務所
施工:合同会社 永田大建築設計事務所

唐松の変化概要
  • 所在地:北広島市
  • 用途:アトリエ
  • 種別:増築
  • 構造:木造在来軸組工法
  • 規模:44㎡
  • 階数:2階
  • 断熱外壁:高性能グラスウール16k t=105 + 付加断熱 高断熱フェノールフォームt=60mm 
  • 断熱屋根:高性能グラスウール16k t=280 +付加断熱 押出法ポリスチレンフォーム保温板b-3 t=25mm
  • 換気方式:第3種換気システム
  • 暖房方式:電気式空気熱ヒートポンプセントラルヒーティング PSパネル、温水床暖房
  • 照明器具:LED省エネ照明器具
  • 外壁:北海道産唐松材
  • 屋根:リベットルーフ シート防水
  • 内装壁:EP塗装
  • 内装天井:EP塗装
  • 内装床:ナラフローリング、メープルフローリング オスモ塗装、
  • 竣工:2016
  • 撮影:OKA PHOTO、西川公朗