自邸「唐松」は札幌市近郊の緑豊かな住宅街に位置します。道路を隔てた向かいの敷地に連続する樹木が存在します。そこには自然以外の存在がありません。夏は植物の緑でいっぱいになり、秋の紅葉を経て落葉した遠くの樹木と手前の樹木が風に揺れる動きの違いを楽しむ事ができます。その中で、一際目を引く樹木が1本あります。唐松です。樹齢を重ねた独特の樹皮を持つその唐松は、季節を問わず様々な変化で見る者を楽しませてくれます。そんな変化を身近に感じる事ができる位置に2階床レベルを配置し、その場所を家族の活動拠点としました。この建築はピクチャーウィンドウ「唐松」を中心に空間構成を構築しました。敷地は前面道路より600mm程高く、道路からのアプローチは緩やかなスロープで、無意識に高低差を上ります。エントランスに入ると、光は最小限に押えられ、洞窟にいる様な感覚。そこから階段を600mm降ります。暗いエントランスから長い廊下の先、ラウンジを眺めると光の溜まりがあり、この時点ではその原因が何かをうかがう事は出来ません。エントランスホールにある階段から2階へ移動します。階段手摺の線、2階天井に設けられた線を感じながら登り切ると、その先には美しい 「唐松」が存在します。光の正体が明らかになります。「唐松」が心に癒しを与え、日常生活を豊かにしてくれる事を期待して計画をしました。

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外観 唐松の外壁・煙突・大きな窓からうかがえる内部天井仕上げ材の木製ルーバーが印象的です。
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外観 唐松の外壁が経年変化でグレー色に変化していきます。
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外観遠景 周囲の建物より高さをおさえコンパクトに設計しました。周囲との調和を目指しています。
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玄関ポーチ。右側は物置、左には玄関ドア。奥には屋根付きスペースを設けました。
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玄関ホール。広々としたスペース。1mほど階段をおり1階は半地下空間。陰影を楽しむ設計。天井は唐松板張りとし、内部玄関から外部玄関ポーチまで唐松板が続きます。廊下の突き当たりに見える空間は、ラウンジです。
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ラウンジ。吹き抜け空間に薪ストーブを設けて。ソファで読書や窓からの唐松林・薪ストーブの火を同時に楽しみむことができます。
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階段。タモ材を使用した階段。階段の段板を受けるささら材は、40×40の材料を三角形に組立て透け感を出し軽やかに設計しています。手摺 40×40のタモ材料がコンクリートの床から生える様に連続し2階へ誘います。
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階段。手摺 40×40のタモ材料が2階へ誘います。
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2階からの大きな窓からは、原生林の唐松林を望むことができます。四季を通して最高の景色を楽しむ事ができます。
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2階廊下から水平連続窓、天井の木製ルーバーの延長線上に原生林の唐松林が存在します。
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2階から見たラウンジ。
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キッチンはダイニングスペースより1段(140mm)下げ、ダイニングで過ごす家族とキッチンで調理する家族の視線ラインを合わせられるよう配慮しました。
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フルオーダー洗面。天板とシンクはモルタル仕上げとし、鏡と並びのタモ面材は、扉になっていて開けると収納となっています。
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トイレカウンター収納。カウンター天板はモルタル仕上げとし、カウンター下の扉を開けると収納となっています。
  • 所在地:北広島市
  • 世帯:夫婦+子供3
  • 用途:住宅
  • 種別:新築
  • 構造:木造在来軸組工法(HSS金物)
  • 規模:167.3㎡
  • 階数:2階
  • 断熱外壁:高断熱フェノールフォーム外張り t=60mm 
  • 断熱屋根:高断熱フェノールフォーム外張り t=120mm
  • 換気方式:第3種換気システム
  • 給湯方式:電気式温水器
  • 暖房方式:電気式空気熱ヒートポンプセントラルヒーティング・コンクリート埋設床暖房蓄熱、薪ストーブ
  • 照明器具:LED省エネ照明器具
  • 外壁:北海道産唐松材
  • 屋根:ガルバリウム鋼板フラットルーフ雪止め無落雪
  • 内装壁:珪藻土
  • 内装天井:珪藻土、構造材オスモ塗装上タモ材ルーバー仕上げ
  • 内装床:ナラフローリング オスモ塗装、コンクリート直均しステイン調塗料
  • 撮影:西川公朗
  • 掲載:Replan北海道107号掲載